Panic Theatre Vol.15 海外新作シリーズ
マーガレット・ウッド◆作 安達紫帆◆訳 中村まり子◆演出
「ラスト・シーン」〜Last Scene of All〜
大ベテラン俳優たちを迎えて、小劇場で最高に贅沢な心温まるコメディを、どうぞ、お楽しみください!
2005年10月19日(水)〜10月23日(日)
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出演:堀内美希/原知佐子/加藤土代子/藤川洋子/中村まり子
本多一夫/三谷 昇(演劇集団 円)/川辺久造(文学座)
美術:河井妙子/演出助手:束野奈央/照明:日高勝彦/音響:井出比呂之/舞台監督:亘理千草/宣伝美術:福嶋岳史/撮影:伊勢和人
企画製作:パニック・シアター
下北沢 「劇」小劇場 TEL.03-3466-0020 (小田急線・京王井の頭線「下北沢駅」南口下車 徒歩3分 )
ロンドン郊外、引退した俳優たち専門の老人ホーム。
1990年頃の12月初旬のある一日。
ラウンジには元・シェイクスピア女優のアンシア、元・イプセン女優のフランシスカ、元・大衆演劇女優のボビー、元・ショーガールのチェリー、アンシアの付き人で長年彼女の身の回りの世話と舞台のプロンプターを勤めてきたグラディス。
5人の女たちは、このホームでの単調で刺激のない日々に不満を持ちながら、過去の華やかな舞台生活の思い出の中に生きている。
ホームは心地よく、ラウンジに集った彼女たちは一見穏やかで平和そうだが、ひとたび芝居の話題になると、それぞれが自己主張を始め、プライドとプライドのぶつかり合いになってしばしば諍いが起きる。
特にこのホームの中では自分が一番女優としての格が高いと思っているアンシアはわがままで、争い事の種になっている。
女同士だと小競り合いを繰り返す彼女たちも、このホームの所長や、元・喜劇俳優のレッドファーン、つまり“男たち”が部屋に入ってくると穏やかさを装ってしばし平和な空気になる。
そんなある日、所長が皆にニュースを告げる。「今日このホームに新たな入居者が来ます。皆さんよくご存じのジェントルマンです」と。そしてそのジェントルマンをこのホームに入るよう勧めたレッドファ−ンの口から、その男優は元・二枚目シェイクスピア俳優のサー・アーサー・ペンドラゴンだと知らされる。
女たちは急に色めき立つ。特にアンシアは卒倒する勢いで、興奮し、この再会の機会に喜び震える。
実はアンシアとペンドラゴンはかつて同じ劇団で、2人はシェイクスピア作品の看板コンビで、私生活でも恋人同士だったのだ。だがプレイボーイのペンドラゴンは多くの女と関係を持ち、アンシアを捨て若い女優と結婚した。一方アンシアは未だに彼を忘れられない。
そして、いよいよペンドラゴンがホームに到着する・・・・・。
数十年ぶりに再会した2人はお互い、相手の変わり様に驚きショックを隠せないでいたが、次第に過去の華やかな自分たちの感覚を思い出し、ペンドラゴンはもう−度2人でやり直そうとアンシアに告げる。喜びに満ち溢れるアンシア。しかしそれは束の間の夢だった。ペンドラゴンは既に認知症に冒されていて、自分が今でも二枚目の現役俳優であると思いこみ、目の前にいるアンシアを、かつて彼女を捨てて妻にしたマギーと混同する。
そんなペンドラゴンを痛々しい思いで見つめていた女がいた。アンシアの付き人のグラディスである。
実はグラディスはうんと若い頃、ペンドラゴンに恋をし、アンシアには隠し通してきたが2人は恋人同士の時期があったのだ。
その日の夜中、ペンドラゴンは急にラウンジにグラディスを呼び出し、セリフの稽古に付き合って欲しいと言う。明日から自分は旅公演があり、自分の役は「ヴェニスの商人」の若き二枚目役・バッサーニオだと言い張るのだ。
グラディスは悲しい気持ちを隠して彼の言い付けに従い、セリフの稽古に付き合う。
シェイクスピアのセリフの世界に酔って次第に役に没頭して行くペンドラゴン。
そのセリフのクライマックスで彼の命の灯は突然消える。