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●こちらは「文芸漫談」の過去の公演リストです

Vol.22●2012年5月18日(金)コンラッド『闇の奥』

料 金■2,500円(全席自由)
会 場■北沢タウンホール(TEL.03-5478-8006)
    世田谷区北沢2-8-18

作品詳細

『闇の奥』 梗概

ある日の夕暮、船乗りのマーロウが船上で仲間達に若い頃の体験を語り始める。
マーロウは各国を回った後、ロンドンに戻ってぶらぶらしていたが、未だ訪れたことのないアフリカに行くことを思い立ち、親戚の伝手でフランスの貿易会社に入社した。
ちょうど船長の1人が現地人に殺され、欠員ができたためだった。
マーロウは船で出発し、30日以上かかってアフリカの出張所に着いた。
そこでは黒人が象牙を持ち込んで来ると、木綿屑やガラス玉などと交換していた。また、鎖につながれた奴隷を見た。
ここで10日ほど待つ間に、奥地にいるクルツ(Kurtz)という代理人の噂を聞く。奥地から大量の象牙を送ってくる優秀な人物で将来は会社の幹部になるだろうということだった。
マーロウは到着した隊商とともに、200マイル先の中央出張所を目指して出発し、ジャングルや草原、岩山などを通って15日目に目的地に着いた。
中央出張所の支配人から、上流にいるクルツが病気らしいと聞いた。
蒸気船が故障しており、修理まで空しく日を送る間に再びクルツの噂を聞く。
クルツは象牙を乗せて奥地から中央出張所へ向かってきたが、荷物を助手に任せ、途中から 1人だけ船で奥地に戻ってしまったという。
マーロウは、本部の指示に背いて1人で奥地へ向かう孤独な白人の姿が目に浮かび、興味を抱いた。 ようやく蒸気船が直り、マーロウは支配人、使用人4人(「巡礼」)、現地の船員とともに川(コンゴ川)を遡行していった。
クルツの居場所に近づいたとき、突然矢が雨のように降り注いできた。
銃で応戦していた舵手のもとへ長い槍が飛んできて、腹を刺された舵手はやがて死んだ。
奥地の出張所に着いてみると、25歳のロシア人青年がいた。青年はクルツの崇拝者だった。
青年から、クルツが現地人から神のように思われていたこと、手下を引き連れて象牙を略奪していたことなどを聞き出した。
一行は病気のクルツを担架で運び出し、船に乗せた。
やがてクルツは "The horror! The horror!"[地獄だ! 地獄だ!]という言葉を残して息絶えた。

ジョゼフ・コンラッド <1857年〜 1924年> イギリスの小説家

本名テオドル・ユゼフ・コンラト・コジェニョフスキ(Teodor Jo´zef Konrad Korzeniowski)としてベルディチュフ(当時ポーランド、現ウクライナの一部、ウクライナ語ベルディチフ)に生まれる。
父親は没落したシュラフタ(ポーランド貴族)の小地主で、ロシア占領下のポーランドにおいて独立運動を指導していたが摘発。捕らえられシベリアでの強制労働に処され、このときコンラッドは5歳だった。
一家は北ロシアに移動し、その直後に流刑の地にて、コンラッドの母親は結核で死亡した。やがてポーランドへの帰国が許されたにも関わらず、4年後には父親も死亡し、コンラッドは叔父に引き取られた。
父親は文学研究者でもあり、幼少期のコンラッドは父親所有の本を耽読していた。海洋文学に出会い感化されたのも父親の影響だった。
16歳の年、コンラッドは船乗りになることを目指しポーランドを脱出。フランス商船の船員となった。船はマルセイユ港を起った。回顧録によれば、この船員時代、コンラッドの乗る船は武器密輸や国家間の政治的陰謀にも関わっていた。
コンラッドが自殺未遂をしたのもこの時期となる。
1878年以降、コンラッドは英国船に移り勤務した。以降、英語を学びつつ、世界各地を航海した。この時に得た見聞が、後のコンラッドの小説に大きな影響を及ぼした。
1884 年、コンラッドはイギリスに帰化した。
1895年、処女小説『オールメイヤーの愚行(Almayer's Folly)』を発表。マレーシアを舞台とした物語で、英語によって書かれた。幼少期から青年期に至るまで、ロシア語、ポーランド語、フランス語を使用し、最後に学んだ英語によって小説を書き上げたことは特筆に値する。この小説は好評を持って当時の社会に受け入れられた。これにより、同時代の他の文学者たちとの交流も始まっていった。
1899年、小説『闇の奥(Heart Of Darkness)』を発表。西洋文化の暗い側面を描写したこの小説は、英国船時代にコンゴ川で得た経験を元に書かれたもので、T・S・エリオット『荒地』、ユージン・オニール『皇帝ジョーンズ』、F・スコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』、ジョージ・オーウェル『1984年』などにも影響を及ぼした。またこの小説は、オーソン・ウェルズが映画化の構想を持ったが実現せず、1979年に映画監督フランシス・フォード・コッポラによって翻案され『地獄の黙示録』として映画化された。
1900年、小説『ロード・ジム(Lord Jim)』を発表。この小説は、コンラッドの代表作の一つとされる。
1925年(米、監督ヴィクター・フレミング)と1965年(米、監督リチャード・ブルックス)に映画化されている。
コンラッドの文学作品は、チャールズ・ディケンズやフョードル・ドストエフスキーに代表される古典的小説とモダニズム小説との中間的存在として位置づけられる。ただしコンラッド本人は、イワン・ツルゲーネフを除き、ロシア文学に対してあまり良い印象を持っていなかった。
1924年、コンラッドは心臓発作でこの世を去った。遺体は本名のユゼフ・コジェニョフスキの名前でカンタベリーの墓地に埋葬された。

出演者プロフィール

いとうせいこう

1961年、東京生まれ。
早稲田大学法学部卒業。 作家・クリエーター。
『ノーライフキング』で小説家としてデビュー。
その後『ワールズ・エンド・ガーデン』『解体屋外伝』『豊かに実る灰』『波の上の甲虫』などを執筆。
2013年『想像ラジオ』で第35回野間文芸新人賞受賞。
最新作『鼻に挟み撃ち』(2013年すばる12月号)で2度目の芥川賞候補にノミネート。
主なエッセイ集として『見仏記』(共作/みうらじゅん)『ボタニカル・ライフ』などの他、舞台・音楽・テレビなどで活躍。
公式HP=http://www.froggy.co.jp/seiko/


奥泉 光

1956年、山形生まれ。
国際基督教大学大学院修了。小説家・近畿大学教授。
主な小説に『ノヴァーリスの引用』『バナールな現象』『「吾輩は猫である」殺人事件』『プラトン学園』『グランド・ミステリー』『鳥類学者のファンタジア』『浪漫的な行軍の記録』『新・地底旅行』『神器—軍艦「橿原」殺人事件』などがある。 1993年『石の来歴』で第110回芥川賞受賞。
2009年『神器—軍艦「橿原」殺人事件』で第62回野間文芸賞を授賞。
2014年『東京自叙伝』で谷崎潤一郎賞を授賞。
公式HP=http://www.okuizumi.com/