●こちらは「文芸漫談」の過去の公演リストです
Vol.17●2010年12月10日(金)芥川龍之介『藪の中』
料 金■2,000円(全席自由)
会 場■北沢タウンホール(TEL.03-5478-8006)
世田谷区北沢2-8-18
作品詳細
『藪の中』 梗概
『今昔物語集』巻二十九第二十三話「具妻行丹波国男 於大江山被縛語(妻を具して丹波国に行く男、大江山において縛らるること)」の説話が題材となっている。ここでは、若い盗人に弓も馬も何もかも奪われたあげく、藪の中で木に縛られ妻が手込めにされる様子をただ見ていただけの情けない男の話で、語り部は妻の気丈さと若い盗人の男気を褒め称えて、話を締め括っている。
この情けない男を殺し、殺人事件に仕立てたのが本作(藪の中)である。
本作は、藪の中で起こった殺人事件を、7人の証言者が証言、告白するという形式でなりたっている。捕らえられた盗人。清水寺で懺悔する男の妻。巫女の口を借りて現れた男の霊。それぞれの当事者3人の証言は、盗人が、藪の中で男を木に縛り付けて、男の目の前で女を手込めにしたことは一致しており、説得力はあるが、男の死因については、「偶然」「他殺」「自殺」と見事にそれぞれが食い違っており、結局どれが真相なのか、誰が犯人だったのかは、全てうやむやのままになっている。
現在までに『藪の中』の真相を探ろうと100編以上もの論文が作られ、議論されてきたが、結論は未だ出ていない。
近年では、この小説の題を借りて、関係者の言い分が食い違ったり、証拠が不十分だったり、証言者が少なかったり、などの理由で真相がはっきりしない事を表現する言葉として使用されている。
芥川龍之介 <1892年〜 1927年>
東京市京橋区入船町に新原敏三の長男として生まれる。
生後まもなく母が発狂したため、その実家の芥川家の養子となり、幼少年期を下町の本所に送る。
大正2年、東大英文科に入学し、その翌年に豊島与志雄や菊池寛らと第三次「新思潮」を創刊。
大正5年に発表した「鼻」が夏目漱石に激賞され、続く「芋粥」、「手巾」も好評を博し、新進作家としての地位を確立する。
作品はほとんどが短編で、王朝物、切支丹物、現代物、歴史物など多彩な題材を扱ったが、いずれにおいても、小説の技術的洗練と形式的完成が追求されている。
芸術派を代表する作家として活躍する一方、後年には自伝的な素材が多くなり、「点鬼簿」(大正15)、「玄鶴山房」(昭和2)など、陰鬱な傾向を強めていった。
昭和2年7月24日、睡眠薬により自殺。享年35歳。
他の代表作は「羅生門」、「鼻」、「地獄変」、「河童」、「歯車」など。
出演者プロフィール
いとうせいこう
1961年、東京生まれ。
早稲田大学法学部卒業。 作家・クリエーター。
『ノーライフキング』で小説家としてデビュー。
その後『ワールズ・エンド・ガーデン』『解体屋外伝』『豊かに実る灰』『波の上の甲虫』などを執筆。
2013年『想像ラジオ』で第35回野間文芸新人賞受賞。
最新作『鼻に挟み撃ち』(2013年すばる12月号)で2度目の芥川賞候補にノミネート。
主なエッセイ集として『見仏記』(共作/みうらじゅん)『ボタニカル・ライフ』などの他、舞台・音楽・テレビなどで活躍。
公式HP=http://www.froggy.co.jp/seiko/
奥泉 光
1956年、山形生まれ。
国際基督教大学大学院修了。小説家・近畿大学教授。
主な小説に『ノヴァーリスの引用』『バナールな現象』『「吾輩は猫である」殺人事件』『プラトン学園』『グランド・ミステリー』『鳥類学者のファンタジア』『浪漫的な行軍の記録』『新・地底旅行』『神器—軍艦「橿原」殺人事件』などがある。 1993年『石の来歴』で第110回芥川賞受賞。
2009年『神器—軍艦「橿原」殺人事件』で第62回野間文芸賞を授賞。
2014年『東京自叙伝』で谷崎潤一郎賞を授賞。
公式HP=http://www.okuizumi.com/