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●こちらは「文芸漫談」の過去の公演リストです

Vol.16●2010年9月24日(金)横光利一『蝿』


料 金■2,000円(全席自由)
会 場■北沢タウンホール(TEL.03-5478-8006)
    世田谷区北沢2-8-18

作品詳細

『蝿』 梗概

この作品は、一匹の蝿の目を通して描写がなされる奇妙な短編小説である。
ある宿場から出発する1台の馬車に起こる出来事を、あたかも蝿の目がカメラのレンズのようになって説明されていく。
様 々な境遇の人間が出てくるが、その内面に迫ることなく、あくまで客観的な描写が続く。
まるで映画のモンタージュ技法のように・・・。

真夏の宿場から街に向けて、馬車が出発する。
危篤の息子のもとへ急ぐ農婦、駆け落ちの若い男女、母親と男の子、大金を手にした田舎紳士の、合計六人が馬車に乗る。
一疋の蠅が馬車の屋根に止まり、馭者の頭や馬の背に飛び移る。
馭者は饅頭を食べて居眠りをし、馬車は崖下へ墜落する。蠅は馬車から離れ、悠々と青空を飛んで行く。

さて、この馬車に乗り合わせた不幸な人たちを紹介してみよう。
息子が死にそうだからと、街へ向かって行った農婦の場合、もしかしたら息子よりも早く死んでしまったのかも・・・???。
生まれてからずっと貧しくて、やっと大金を手にした田舎紳士の場合は、生活がよくなるとおもいきや・・・???。
若者と娘は、親類縁者からやっと逃げてきたのに、それがむくわれずに・・・???。
無邪気な男の子を連れた母親の場合、楽しみにしていた里帰りだったのかも・・・???。
このように馬車に乗っていた人、それぞれが幸せをつかんだり、つかみかけていたのに、一瞬にして、消えてしまった。
まるで世の中の皮肉、運の悪さを象徴したように・・・、
崖から墜落して死んだ人馬は不運としか言いようがない・・・???。

横光利一 <1898年〜 1947年> 

小説家。 福島県北会津郡に生まれる。
大正3年、早稲田大学英文科に入学。
大正12年、斬新な構図、文体を駆使した「蝿」、「日輪」によって注目を浴び、一躍新進作家としての地位を確立。
大正13年、川端康成らとともに「文芸時代」を創刊。芸術派文学陣営の先駆として活躍し、プロレタリア文学陣営と激しい論争を展開する。
昭和5年、新心理主義的手法を取り入れた「機械」を発表。小林秀雄による絶賛もあいまって、大きな反響を呼んだ。
昭和10年、〈純文学にして通俗小説〉を提唱した評論「純粋小説論」を発表。
戦時下においては、ヨーロッパの合理主義に対する日本独自の精神を模索した大作「旅愁」(昭和12〜21)を書き続けたが、未完に終わった。 昭和22年12月30日、急性腹膜炎により死去。享年49歳。
代表作は「春は馬車に乗つて」、「機械」、「上海」、「紋章」、「旅愁」など。

出演者プロフィール

いとうせいこう

1961年、東京生まれ。
早稲田大学法学部卒業。 作家・クリエーター。
『ノーライフキング』で小説家としてデビュー。
その後『ワールズ・エンド・ガーデン』『解体屋外伝』『豊かに実る灰』『波の上の甲虫』などを執筆。
2013年『想像ラジオ』で第35回野間文芸新人賞受賞。
最新作『鼻に挟み撃ち』(2013年すばる12月号)で2度目の芥川賞候補にノミネート。
主なエッセイ集として『見仏記』(共作/みうらじゅん)『ボタニカル・ライフ』などの他、舞台・音楽・テレビなどで活躍。
公式HP=http://www.froggy.co.jp/seiko/


奥泉 光

1956年、山形生まれ。
国際基督教大学大学院修了。小説家・近畿大学教授。
主な小説に『ノヴァーリスの引用』『バナールな現象』『「吾輩は猫である」殺人事件』『プラトン学園』『グランド・ミステリー』『鳥類学者のファンタジア』『浪漫的な行軍の記録』『新・地底旅行』『神器—軍艦「橿原」殺人事件』などがある。 1993年『石の来歴』で第110回芥川賞受賞。
2009年『神器—軍艦「橿原」殺人事件』で第62回野間文芸賞を授賞。
2014年『東京自叙伝』で谷崎潤一郎賞を授賞。
公式HP=http://www.okuizumi.com/