あらすじ
《人が人を殺す、殺したくなる》という事実に、色々なシチエーションで「死」というものに関わりあっている五つエピソードから成る。
『娯楽』独房で、男が「久保山幸太郎」という男の裁判を再現する。
「久保山幸太郎」の罪状は、見ず知らず(と思われている)人を衝動的に五人殺害、二人に障害を負わせたというもの。
被告人の罪状認否から検事の起訴状朗読。被告人の反論等、裁判経過を再現。
裁判官、検事、弁護士、そして被告人の四人を一人で演じる第一話。
『気楽』弁護士と依頼人と思われる人物三人との電話での会話。
礼金を渋る(悪徳?)病院経営者との〈礼金攻防戦〉
「嫌煙権」という主張で裁判を起こしている依頼人とのやりとり。
そして「死刑廃止運動」の中心人物との《崇高な》会話。
すべてが本当であり、そして嘘であること。
その実、現実と現実の溝の深さを思い知らされるなかで、すいすいといとも簡単に泳ぎ回る弁護士の本音と建前を表現している― 第二話
『極楽』共同アパートの自宅台所で、花見のカレーを嫌々ながら作っている(作らされている)男。
〈協調する〉ということに毒づきながら周囲すべてに嫌悪感を表し、やがては悪意に変わり、カレーの中に― そして男の行く末は・・・という第三話
『道楽』居酒屋にて、隣のひとりで呑みにきているであろう人物に、自分は人を殺してきた、と、サラサラ語る― 〈国家公務員〉の男。
こと細かに楽しげに「死刑執行時」の様子を語る姿は、まさしく― というべきか、青ざめる隣の客の様子をみて楽しんでいることが― なのか・・・第四話
『悦楽』そして、安アパートにて― 今しがた、コンビニに行って来た男の右手に握られている血塗れのトカレフ(ピストル)―
カップラーメンを食べ、音楽をかけながら踊り― とただ単に過ごしていたところに、作りすぎたおかずをもってきてくれた隣の主婦も・・・
食べたり趣味に興じたり― と同様に《人を殺す》ことも淡々と。
その事実をひとりで〈喜び、楽しむこと〉を描いた―第五話
〈死〉という事柄は、決して劇的なプロセスから生まれるものばかりではなく、ごくごくフツウの生活・人生による、たくさんの選択肢の内のひとつのエピソードにすぎない。
では、どんな〈死〉との関わり方が「大罪」に値するか―
「五つの大罪」にはその答えの一部をおしえてくれるかもしれないお話。
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